2021年1月に火災保険料の改定! 保険料の負担を抑えるコツとは?

2021年1月、損害保険会社各社では火災保険料の改定が実施され、事実上値上げとなった保険会社が多く存在します(条件によっては値下げになる場合もあります)。
実は今回の改定は2019年10月から2年連続となります。
その大きな理由は、火災保険の保険料を決める基礎となる「参考純率」の引き上げが2年連続で行われたからです。
そもそもなぜこれだけ頻繁に保険料は改定されるのでしょうか。
その背景や近年の火災保険の動向など、さらには地震保険の情報についてもお伝えしたいと思います。
保険料値上げの背景

2021年1月の火災保険の保険料値上げは、2019年10月に行われた「参考純率」の改定が要因となっています。
参考純率は、損害保険料率算出機構が過去のデータなどをもとにさまざまな手法を用いて算出しているもので、多くの損害保険会社が保険料を計算するときの基礎に使っています。そのため参考純率が引き上げられると、損害保険会社は保険料の改定を実施することになります。
2021年1月の保険料の改定は、2019年10月に行われた参考純率の改定を反映して行われたものです。
ちなみに、損害保険会社各社は参考純率を必ずしも保険料算出の基礎として使う必要はなく、独自の値を使ってよいことになっているのですが、実態としては多くの損害保険会社が参考純率を使用して自社の保険料を算出しています。
参考純率は実は過去にもこれだけ引き上げがあった

ここ数年、台風や豪雨などを発端とした風水災が多発していることは記憶に新しいと思います。
被害が大きくなると増えるのが火災保険の保険金請求です。
日本損害保険協会の発表によると、風水災などによる保険金支払いは1兆円を超える年が2011年以降続いているそうです。
こうした保険金支払いの増加は、当然参考純率の算定に影響を及ぼします。
そのため参考純率は、たびたび改定が行われ、その都度引き上げが行われているのです。
【火災保険参考純率改定の歴史】 | |
損害保険料率算出機構による金融庁長官への届出日 | 住宅総合保険の参考純率引上率 |
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2014年6月25日 (2014年7月2日適合性審査結果通知受領) | 平均で3.5%引き上げ |
2018年5月21日 (2018年6月15日適合性審査結果通知受領) | 平均で5.5%引き上げ |
2019年10月7日 (2019年10月30日適合性審査結果通知受領) | 平均で4.9%引き上げ |
※契約条件(保険金額や建物の構造など)によって改定率(引上げ率・引下げ率)は異なる。 出典:損害保険料率算出機構よりニッセンライフ作成 |
参考純率が改定されたからといって、すぐに損害保険各社の火災保険の保険料の値上げが行われるわけではなく、しばらくたってから値上げが行われることになります。
2021年1月の保険料値上げは、2019年10月の参考純率の改定が反映されたものです。
なお2019年の参考純率の改定は、2018年度までに起きた自然災害の影響を踏まえて行われた改定です。
2019年以降も自然災害が頻発していることを考えると、近い将来参考純率の引き上げが行われたとしても、決して不思議ではないでしょう。
地震保険の保険料も値上げ傾向?

保険料の値上げ傾向は火災保険だけではなく、地震保険も同様に起きています。
地震保険の保険料には、損害保険料率算出機構が算出する「基準料率」が使われているのですが、2021年1月に地震保険の改定が実施され、全国平均で5.1%の基準料率が引き上げられています。
過去を振り返ると地震保険の基準料率は、実は多くの改定が実施され、その都度引き上げられているのです。
【地震保険基準料率改定の歴史】 | |
損害保険料率算出機構による金融庁長官への届出日 | 基準料率引上率 |
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2013年3月26日 (2013年4月17日適合性審査終了) | 全国平均で15.5%引き上げ |
2015年9月30日 (2015年10月23日適合性審査終了) | 全国平均で5.1%引き上げ |
2017年6月15日 (2017年7月20日適合性審査終了) | 全国平均で3.8%引き上げ |
2019年5月28日 (2019年6月27日適合性審査終了) | 全国平均で5.1%引き上げ |
※引き上げ・引き下げ率は、都道府県、建物の構造ごとに異なる。 出典:損害保険料率算出機構よりニッセンライフ作成 |
2021年1月の損害保険会社各社による地震保険の保険料改定は、2019年5月の基準料率改定をふまえて実施された改定です。
近年の度重なる基準料率改定は、東北地方太平洋沖地震をふまえた震源モデルが見直されたことなどによって実施されました。
近年も地震が多発している状況であればと、今後も引き上げられる可能性があります。
火災保険や地震保険の保険料負担を抑えるには?

保険の加入者にとって気になるのが保険料の負担だと思います。
どのように負担を抑えていけばよいのでしょうか。
保険料を安くするなら、できるだけ保険期間の長い契約にしましょう。
一般的な火災保険では、保険期間が長くなるほど保険料は割安になる商品が多いからです。現在火災保険で締結できる最長の保険期間は10年です。
保険料の値上げ前に保険期間が10年間の契約を締結しておけば、長い目で見ると保険料の負担を抑えることにつながります。
しかし、長期契約にしてしまうと、保険期間の途中で保険料の値上げがあった場合にその影響を受けるのでは?と心配する人もいるでしょう。
保険期間の途中で保険料の値上げがされたからといって、契約の途中で保険料が変わることはありませんのでご安心ください。なぜなら、火災保険の保険料は契約時の条件で保険料が計算されるからです。
長期契約の場合は、保険加入時に決められた保険料が、保険期間中ずっと適用されるということです。
一方、地震保険については、主契約の火災保険が10年の一括払契約だった場合、地震保険の保険期間は1年ごともしくは5年ごとに継続される契約となります。
地震保険も保険期間が長くなるほど保険期間に応じた割引が適用されるため、1年ごとより5年ごとで契約した方がお得になります。
まとめ

先述のとおり、火災保険や地震保険の保険料の値上げは、今後も起こるかもしれません。
火災保険を見直すときの知識として、当コラムでご紹介した保険料の負担を抑えるポイントを覚えておいてください。
とはいえ火災保険や地震保険の改定により保険料が上がるのか下がるのか、自分で判断するのが難しいこともあるでしょう。
その場合は保険会社の代理店などに相談することをおすすめします。
- SJ20-16770 2021/03/15
この記事を書いた人 | |
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![]() | 小沢 美奈子(ファイナンシャル・プランナー) |
K&Bプランニング代表。大学卒業後、損害保険会社に約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。ファイナンシャル・プランナーとして活動開始後はWebや書籍などで記事執筆、セミナー講師、保険の見直し、家計相談などを行う。シニアや生活困窮者のライフプランにも力を入れる。趣味はカメラ。 |
出典
「火災保険参考純率」(損害保険料率算出機構)
https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/
「地震保険基準料率」(損害保険料率算出機構)
https://www.giroj.or.jp/ratemaking/earthquake/
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