医療保険制度とは?損しないために押さえておきたい4つのポイント

  • 更新日:

    (公開日:2020/07/13)

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医療保険制度とは?損しないために押さえておきたい4つのポイント

医療保険制度は、加入者が出し合ったお金(保険料)から、医療費の一部が支払われる制度ですが、「健康保険のしくみ」と言った方が分かりやすいかもしれません。75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」もこの中に含まれます。

医療保険制度と医療費にかかわる制度のポイントは主に4つです。

1保険証を使うと原則3割負担で受診できる
2高額な医療費に対しての公的助成がある
3病気やケガで働けなくなったときの生活を支える給付もある
4医療費の自己負担がさらに軽くなったり、無料になったりする助成制度がある

この記事を読めば、公的医療保険制度について理解することができるでしょう。
その上で、民間の「保険」への加入を検討していただければと思います。

医療保険制度の要!保険証の種類と特徴

病院で提示する健康保険証。
正しくは「健康保険被保険者証」といいます。
この保険証が公的医療保険制度の重要な役割を担っているのです。

保険証の役割

保険証を提示することで、医療費は基本3割負担となります。(年齢や所得によって1割、又は2割の場合あり。)
それでは、残りの7割は誰が払ってくれているのでしょうか?

それは保険者、つまり加入先の健康保険です。
私たちが月々保険料を納めることにより、自己負担分を3割とし、残りの7割は保険者が支払うという仕組みになっているのです。

保険証の種類は仕事で変わる!?

子供の頃は親に渡されていた保険証。
就職すると会社から渡され、退職するときには保険証を返却しなければなりません。別の会社に転職する際には、転職先で新たに保険証が渡されます。
なぜ勤務先と保険証に関係があるのでしょうか。

実は勤務先ごとに加入する健康保険が違うのです。

健康保険組合(組合健保、組合管掌健康保険)主に大企業。国の健康保険事業を代行している、会社ごとの独自の健康保険。
協会けんぽ(全国健康保険協会、政府管掌健康保険)健康保険組合のない中小企業等で働く従業員やその家族が加入している健康保険。都道府県ごとに支部はあるが、運営は同じなので給付条件などは一律。
共済組合公務員(国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員など)やその家族が加入する健康保険。
国民健康保険(国保)上記のどれにも属さない自営業や個人事業主が加入する健康保険。運営主体は市区町村のため、手続きは役所で行う。
後期高齢者医療制度原則75歳になれば自動的に全員が加入する健康保険。運営主体は都道府県ごとの広域連合だが、実際の手続きなどは市区町村の窓口。

それぞれ運営が違うので、勤務先が変われば、それまで使っていた保険証は使えません。
そのため医療機関は月に1度、保険証に変更がないかを確認しているのです。

3割負担で受診できるのは、保険証のおかげだということがわかりましたね。
それでは、もし100万円かかる治療を受けた場合、そのうちの30万円を払わないといけないのでしょうか?

心配いりません。助成を受けられます。

医療保険制度は高額な医療費の助成もしてくれる

どんな保険に加入していても共通した「高額な医療費に対する助成制度」があります。
まずは「高額療養費制度」についてみていきましょう。

高額療養費制度の仕組みと注意点

医療機関や薬局の窓口で支払う自己負担には、1カ月ごとの上限額が決められています。
それ以上の医療費を支払った場合、あとで申請をすることで払い戻してもらえます。

上限額は年齢や所得によって決められています。
たとえば年収が約370~約770万円の70歳未満の方の上限額は
8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%
で計算されます。
先ほどの「100万円の治療を受けた場合」の自己負担限度額は
8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円
となります。
高額療養費制度がなければ医療費の3割、つまり30万円を自己負担しなければならないので、ありがたい制度といえます。

ただし、注意点が2点あります。

上限額は1か月(毎月1日から末日まで)で設定

月ごとに自己負担の上限額が設定されるため、医療費の支払いが複数の月にまたがる場合は、自己負担の総額が大きくなってしまう場合があります。
年収500万円の人を例にして見てみましょう。

【例1】医療費の支払いが1月のみだった場合
1/1~31の医療費100万円(窓口負担30万円)
上限額 8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円
自己負担額合計=8万7,430円

【例2】医療費の支払いが1月と2月にまたがった場合
1/1~31の医療費60万円(窓口負担18万円)
2/1~28の医療費40万円(窓口負担12万円)
[1月]上限額 8万100円+(60万円-26万7,000円)×1%=8万3,430円
[2月]上限額 8万100円+(40万円-26万7,000円)×1%=8万1,430円
自己負担額合計=16万4,860円

高額療養費の対象は、保険適用される診療に対する自己負担額のみ

たとえば個室を利用したときの差額ベッド代、食費、先進医療を受けた場合の費用は、高額療養費の支給対象となりません。
そんな高額な医療費がかかることはめったにない!と思われるかもしれません。
ここで、比較的身近な「出産」について、医療費の実情をみていきましょう。

出産費用の助成と注意点



出産には平均で約40万円~50万円かかると言われます。
自然分娩の場合は、病気ではないので、保険適用外、全て自己負担となりますが、健康保険から出産育児一時金として1児につき50万円*1が支給されます。
*1 2023年4月1日以降に、産科医療補償制度に加入の医療機関等で出産した場合。2023年3月31日以前に出産した場合は1児につき42万円。なお、産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合や妊娠週数22週未満で出産した場合などは支給額が異なります。

この出産育児一時金は、国民健康保険・政府管掌健康保険など加入している健康保険にかかわらず、また夫の扶養に入っている場合も支給されます。
なお、帝王切開による分娩など「異常分娩」に該当する場合は、保険適用となるので、入院や手術、検査にかかる自己負担は3割となります。

会社員の場合は、出産育児一時金のほかに健康保険から「出産手当金」が受けられる場合があります。
出産手当金は、本人が出産のため会社を休み、給与の支払いがなかった所定の期間に対して給与の約3分の2が給付されますので、夫の扶養に入っている方は対象外です。

このほか、加入している健康保険によっては、出産育児一時金に加えて独自の付加給付制度がある場合もあるので、確認してみましょう。

働けなくなったときの生活を支える給付もある

医療費が高額になった場合や、出産の際には健康保険から給付があることはわかりましたが、病気やケガをした場合の経済的負担は医療費だけではありません。
病気やケガで仕事を休まなければならなくなった場合には収入がなくなり、生活ができなくなるかもしれません。

会社員や公務員には傷病手当金

会社員や公務員の方は、病気やケガで仕事を休んだとき「傷病手当金」が支給されます。
支給条件は加入している健康保険ごとに定められています。例えば協会けんぽの場合は、以下のとおりです。

  • (1) 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • (2) 仕事に就くことができないこと
  • (3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • (4) 休業した期間について給与の支払いがないこと

*全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」より引用

「業務外の事由」としているのは、業務中の事由の場合は業務上・通勤災害による場合は労災保険の給付対象となるためです。また、美容整形など病気とみなされないものも支給対象外です。
なお、有給休暇を利用して仕事を休む場合など給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません(給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。)。

国民健康保険の加入者や家族の健康保険の扶養に入っている方には傷病手当金はありません。また、健康保険の任意継続被保険者である場合は、傷病手当金は支給されませんので、不安を感じる場合は、民間の生命保険などでそなえることも検討しましょう。

障害年金

日本には公的年金制度があり、20歳以上の方は国民年金に加入しています。
「年金」というと“老後の生活のためのお金”のイメージを持つ方も多いと思いますが、事故などにより障害を負ってしまったような場合の生活を支えるための「障害年金」があります。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。

  • 障害基礎年金:国民年金に加入している方
  • 障害厚生年金:厚生年金に加入している方


※障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときに、一時金として支給される障害手当金もあります。

厚生年金に加入している方は国民年金にも加入しているため、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。
障害年金の額は、障害の程度(1級または2級)により異なり、子供がいる場合には人数に応じて年金が加算されます。

障害年金が受けられる要件は、所定の障害の状態にあることと、国民年金の保険料の納付状況が挙げられます。

「障害の状態」とは、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの障害だけでなく、長期療養が必要ながんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの内部疾患、または統合失調症などの精神の障害により、仕事や生活が著しく制限を受ける状態になったときなども含まれます。また、障害者手帳を持っていない場合でも、障害年金を受けることができます。

病気やケガで仕事ができなくなったときには、障害年金が受給できないか確認しましょう。

疾病によって医療費の自己負担が軽くor 無料に!

健康保険以外にも、国や自治体が行っている医療費の助成制度がありますので、利用できるかどうか確認してみましょう。

自立支援医療制度

概要厚生労働省が「心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する」と定める公費負担医療制度
内容精神通院医療、更生医療(18歳以上)、育成医療(18歳未満)の3種類があり、それぞれ対象となる疾病や治療例が決まっている
主な疾病例精神疾患による通院治療、視覚障害による水晶体摘出術、心臓機能障害によるペースメーカー埋込、腎臓機能障害による人工透析など
助成金額所得に応じた1カ月あたりの上限額(5,000円や10,000円など)を超える金額

特定疾病受療証

概要保険者(加入している健康保険)ごとに実施している医療費助成
対象疾病人工透析を必要とする慢性腎不全、血友病、抗ウィルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染など)
助成金額所得に応じた1カ月あたりの上限額(10,000円や20,000円など/入院・外来ごと)を超える金額。

特定医療費(指定難病)受給者証(指定難病医療費助成制度)

概要「指定難病」と診断され、一定程度以上の病状の場合に都道府県と指定都市が実施する医療費助成
対象疾病300以上が指定難病となっています。指定難病は厚生労働省や難病情報センターのホームページで確認できます。
厚生労働省ホームページはこちら
難病情報センターのホームページはこちら
助成内容自己負担額が3割から2割に引き下げられる。さらに所得や治療内容によって、1カ月あたりの上限額(10,000円や20,000円など)がある。
※指定医療機関で行われた治療でなければ医療費助成の対象になりません。

指定難病医療費助成制度の窓口は、お住まいの自治体により異なります。
この他にも、障害を持っている方やひとり親家庭、乳幼児への医療費助成を独自で行っている自治体もありますので、市町村や保健センターのホームページや窓口などで確認してみましょう。

まとめ:医療保険制度の基本を覚えておこう

4つのポイントにわけて解説しました。
冒頭で示した表を、「どんな時にどんな助成を誰がしてくれるのか」の視点でまとめてみます。

1保険証を使うと原則3割負担で受診できる
2高額な医療費に対しての公的助成がある
3病気やケガで働けなくなったときの生活を支える給付もある
4医療費の自己負担がさらに軽くなったり、無料になったりする助成制度がある


誰が助成してくれるか加入している健康保険国・都道府県・市区町村
健保組合・協会けんぽ・共済国民健康保険や家族の健康保険(扶養に入っているとき)
1保険証を使うと自己負担が3割
(未就学児は2割、70歳以上は所得に応じて1~3割)
2高額な医療費には・高額療養費制度
・出産育児一時金
・出産手当金
・高額療養費制度
・出産育児一時金
3病気やケガで働けなくなると傷病手当金
4特定の疾病や障害になると特定疾病受療証特定疾病受療証・自立支援医療制度
・指定難病医療費助成制度
・障害者医療制度
4ひとり親家庭が病院にかかるとひとり親医療費助成
4乳幼児が病院にかかると乳幼児医療費助成


制度の詳細を全て覚える必要はなく、いざというときに「該当しているかもしれない!」と考えてみることが重要です。
それぞれの制度の概要や、対応する窓口が違うことは覚えておきましょう。

医療費に対して不安を抱えている方も、経済的な負担を軽くできる制度があることがわかったと思います。
もし民間の保険に加入することを考えているなら、「これらの公的医療保険制度ではまかなえない支出はどれぐらいか」という視点で考えるのが重要です。

たとえば、自営業の方なら「傷病手当金がないので、病気で働けなくなるリスクに備えたい」などです。

大事なのは自分に合う保険選び!
どんなリスクに備えたいかという視点で、医療保険制度と一緒に考えましょう。

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この記事を書いた人
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WillNaviを運営する株式会社ニッセンライフは通販でおなじみのニッセンのグループで、セブン&アイグループ傘下の企業です。
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出典

「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
「出産育児一時金の支給額・支払方法について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html
「傷病手当金」(全国健康保険協会 協会けんぽ)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/
「障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患の方も対象です」(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201201/2.html
「自立支援医療制度の概要」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html
「指定難病」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html
難病情報センターホームページ(難病情報センター)
https://www.nanbyou.or.jp/

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